弁護士楾大樹の法律相談室

相続問題

【遺産相続について】(相談者 50代 男性)
Q. 先日、父が亡くなりました。私は兄と2人兄弟で、母は健在です。
  父の遺産は、自宅の土地・建物のほか、預貯金があります。遺産相続の手続は、
  どのように進めればよいのでしょうか。

A. 法定相続人は、あなたとお母さんとお兄さんの3人ですから、この3人でまず
  話し合うことです。法定相続分が解決の基準になりますが、これに従う必要は
  ありません。
  話し合いが成立すれば、遺産分割協議書を作成して3人が署名・押印し、
  これを各金融機関や法務局に提出して、名義変更をすることになります。
  話し合いが難しい場合には、家庭裁判所に調停を申し立てることになります。


Q. 実は・・・「遺産はすべて長男に相続させる」という父の遺言が見つかったのです。
  私は遺産を相続できないのでしょうか。

A. 3人の合意があれば遺言と異なる分割方法をとることも可能です。それが
  できなくても、「遺留分」として遺産の一部を取得できます。
  このケースでは、あなたの遺産の8分の1を取得する権利があります。
  遺留分減殺請求権は、あなたがお父さんが亡くなったことを知り、かつ、そのような遺言
  があることを知ったときから1年で時効消滅します。
  ですから、1年以内に遺留分の請求をする旨の手紙(内容証明郵便)だけでも
  送っておくべきです。話し合いが難しければ訴訟を起こすことになります。

Q. こんな都合の悪い遺言書は破って捨ててしまいたいです。
A. そんなことをすると、あなたは相続人としての資格を失ってしまいます。自筆証書遺言
  であれば家庭裁判所に「検認」の申立をしなければなりません。
  「検認」は、遺言書の存在と外形を裁判所で確認してもらう手続で、
  公正証書遺言なら不要です。


【債務の相続について】(相談者 50代 女性)
Q. 1年前に亡くなった父の連帯保証債務1000万円を支払うようにという請求書が、
  数日前に私に来ました。主債務者は自己破産したようです。
  母はすでに亡く、私には弟が1人いますが、私も弟も、父が連帯保証人になっていたとは
  知りませんでした。

A. 保証契約が有効に結ばれた限り、あなたと弟さんが500万円ずつ連帯保証債務を
  相続することになります。支払を免れる方法としては、相続放棄が考えられます。
  ただ、相続放棄は、被相続人(お父さん)の死亡を知ってから3か月以内にしなければ
  なりません。

Q. 亡くなってから1年も経っていますので、無理ということでしょうか。
A. 例外的に、3か月の期間のスタートを遅らせることができる場合があります。
  最高裁判例は、3か月以内に相続放棄しなかったのが、@被相続人に相続財産が
  全くないと信じたためであり、A相続人に相続財産の調査を期待することが著しく
  困難で、Bそのように信じるにつき相当な理由がある、という場合には、
  例外的に、3か月の起算点を、債務の存在を知った時にできるとしています。
  @ABを満たせば、本件では保証債務の存在を知った時点からは3か月経っていません
  ので、相続放棄が可能です。

Q. 遺産は自宅の土地建物だけで、すでに弟名義にしました。私は遺産を何ももらって
  いません。

A. 残念ながら、そのようなケースでは、@「相続財産が全くないと信じた」とは言えず、
  起算点を遅らせることはできないというのが最高裁の判例です。

Q. 私はパートの収入しかなく、財産もなく、とても払えません。
A. それなら、自己破産すれば債務をなくすことができます。財産がないのなら、
  特に失うものはありません。ただ、当分の間借入などはできなくなります。

Q. 私が連帯保証債務を全部相続した上で自己破産した方が、
  弟が助かるのではないでしょうか。

A. 弟さんとの間でそのような協議書を交わしても内部分担としての効力しかなく、
  債権者に対しては500万円ずつの支払義務は免れません。
  弟さんは土地建物をお持ちですから、支払っていかざるを得ないと思います。


【親の介護による「寄与分」】(相談者 60代 男性)
Q. 母の遺産をめぐって、弟ともめています。父はだいぶ前に亡くなり、私は母と妻と
  3人で暮らしてきました。私と妻は、10年もの間、重い認知症の母を介護して
  きました。一方、弟は母の面倒はほとんど見ていません。遺産が兄弟半分ずつでは
  納得がいきません。

A. おっしゃるとおり、半分より多く遺産を取得できます。

  被相続人(本件ではお母さん)の財産の維持・増加に特別な貢献をした相続人は、
  貢献の度合に応じて「寄与分」が認められ、遺産を多く取得できます。

  たとえば、家業を継いで親の財産を増加させた場合や、被相続人の財産を管理して
  財産を維持した場合、本件のように介護を行った場合などがあります。

  ただ、子が親の面倒を見るのはある程度は当然のことですから、介護のケースで寄与分が
  認められるには、要介護の程度や介護期間などの面で、特別の貢献をしたと言える程度で
  ある必要があります。
  そして、相続人が介護を行ったことにより、ヘルパーさんなどに支払うべき介護費用の
  出費を免れたと言えるようなら、相続財産の維持に寄与したものと評価できます。

  なお、あなたの奥さんは相続人ではありませんが、奥さんはあなたの代わりに介護して
  くれたのですから、奥さんが介護した分も含めて、あなたの寄与分として考慮することが
  可能です。そのような審判例もあります。
  あなたと奥さんは、10年間も、重い認知症のお母さんの介護をしてこられたのです
  から、特別の寄与と評価できます。

  具体的な算定については、まず、ヘルパーさんなどに頼んでいたらいくらかかったか等を
  考慮して、寄与分の額を算定します。そして、遺産総額から寄与分の額を引いたものを
  相続財産とみなし、それに法定相続分(本件では2分の1ずつ)を乗じると、
  弟さんが取得する遺産の額となります。
  もめるようなら、家庭裁判所での調停、審判により解決することになります。


【遺言について】(相談者 70代 男性)
Q. 私名義の不動産や預貯金などがあるのですが、遺言書を書いておいた方が
  よいでしょうか。

A. 遺言書を書いておくメリットは、次のとおりです。

  遺言がない場合、法定相続人全員が「遺産分割協議書」を交わさなければ名義変更が
  できません。協議が難航し、調停や訴訟になるケースも少なくありません。

  これに対して、遺言があれば遺言どおりに名義変更できるため、紛争を防ぐことができ、
  手間もかかりません。
  弁護士は、遺言があれば防ぐことのできた相続紛争の解決に日々力を尽くしています。

  また、法定相続人以外の世話になった人などに遺産を相続させたい場合や、相続させ
  たくない法定相続人がいる場合も、遺言が有用です。
  たとえば、子がなく、兄弟とは疎遠で、施設に入所されているようなお年寄りが
  亡くなると、遺言がなければ、疎遠な兄弟が相続することになります。
  施設などが葬儀や埋葬に関与し、その費用を遺産からもらおうとすると、
  兄弟との交渉が必要になってしまいます。

Q. 遺言書の作成方法について教えてください。
A. 自分で紙に書く「自筆証書遺言」と、公証役場で公証人に作成してもらう「公正証書
  遺言」などがあります。

 【自筆証書遺言】
  簡便ですが、遺言書の書き方は民法で厳格に定まっているため、気をつけないと
  無効になってしまいます。遺言書の有効性をめぐる紛争も少なくありません。
  また、亡くなった後、家庭裁判所に遺言の「検認」の申立をする必要があり、
  相続人の手を煩わせます。
 【公正証書遺言】
  手間と費用はかかりますが、公証人が関与するため無効となるおそれが少なく、
  原本は公証役場に長期間保存されますので、安心です。

  「検認」も不要ですので、相続人に面倒をかけません。

  公正証書遺言の作成には、証人が2名必要です。相続人などは証人にはなれ
  ません。弁護士に依頼されれば、戸籍謄本等の収集や遺言書の案文作成を
  行うほか、弁護士と事務員が証人として公証役場に同行します。


【生命保険金と遺産相続】(相談者 50代 男性)
Q. 父が亡くなり、生命保険金を、受取人である兄が受け取りました。契約者は父で、
  保険料も父が払っていたようです。この保険金も含めて遺産分けをしたいのですが。

A. 生命保険金が遺産に含まれるかどうかは、保険金の受取人が誰かによります。

  受取人が被相続人(お父さん)となっていれば、保険金は遺産として扱われ、保険金も
  含めて遺産分割をすることになります。
  しかし、本件のように受取人がお兄さんとなっていれば、保険金はお兄さんの固有財産
  となり、お父さんの遺産には含まれません。
  ただし、税法では扱いが異なり、相続税の算定においては、生命保険金は「みなし相続
  財産」となります。

Q. しかし、兄だけがたくさん保険金をもらうのは不公平です。
A. 被相続人から特別に財産をもらったりした相続人がいる場合、もらった財産を遺産に
  合算したものを法定相続分に従って分ける場合があります。
  このように相続財産に合算される財産を、「特別受益」といいます。
  そこで、相続人のうち1人だけが受け取った生命保険金が「特別受益」にあたるか否か
  が問題となります。
  この問題については平成16年の最高裁判例があり、生命保険金は原則として特別受益
  にあたらないとされています。

  ただ、例外的に、@保険金の額、Aこの額の遺産総額に対する比率、B同居の有無、
  C被相続人の介護等に対する貢献の度合など、各相続人と被相続人との関係、
  D各相続人の生活実態などを考慮して、生命保険金を独り占めすることが不公平と
  言えるような場合は、特別受益に準じ、遺産に合算するものとされています。

  本件でも、遺産全体との兼ね合いで保険金が多額過ぎたり、あなたの方が介護などを
  頑張ったりしたような事情があれば、特別受益と評価でき、公平が図られることに
  なります。

【相続人に相続させない方法】(相談者 70代 男性)
Q. 私には息子が2人おりますが、次男はこれまでさんざん私を困らせてきました。
  次男に財産を相続させない方法はありますか。

A. 
【遺言】
  長男に全遺産を相続させる旨の遺言を書く方法があります。
  ただ、子には「遺留分」という、最低限保障された相続権があります。
  このような遺言を書くことにより、次男が相続できる財産を減らすことはできますが、
  遺留分を奪うことはできません。あなたが亡くなられた後、次男が長男に遺留分の請求を
  する可能性があります。

【推定相続人の廃除】
  「推定相続人の廃除」という手続により、遺留分のある相続人から、相続する権利を
  完全に剥奪できる場合があります。

  廃除ができるのは、@被相続人を虐待したとき、A被相続人に重大な侮辱を加えたとき、
  B著しい非行があったときの3つです。
  家庭裁判所に廃除の申立をし、家裁が廃除を認めるか判断します。遺言の中に廃除する
  旨を書いていれば、死後に遺言執行者が家裁に申立をします。

  もっとも、廃除が認められた場合、次男に代わって次男の子が「代襲相続人」となります
  ので、事実上効果が薄いこともあります。

【養子縁組】
  長男の妻や子を、あなたの養子とすることにより、次男の遺留分を減らす方法が
  あります。養子縁組により子の数が増えますので、次男の法定相続分の割合、
  遺留分割合が減ります。

  ただ、遺留分を減らす目的の養子縁組は無効だという訴訟が起きることが
  あります。裁判例では、縁組時の判断能力や、親子のような交流があったか、
  などが考慮されています。

【遺留分の放棄】
  長男に相続させる遺言を書いたうえで、次男に遺留分を放棄してもらう
  方法もあります。

  ただ、放棄するかどうかは次男の自由です。また、あなたの生前に放棄して
  もらうには、家裁の許可が必要です。

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