弁護士楾大樹の法律相談室

不動産問題

【家主の交代について】(相談者40代男性)
Q. 借家に住んでいますが、私の知らないうちに大家さんが建物を他人に譲渡した
  そうです。今後、明け渡しを求められたりしないでしょうか。

A. 大家さんは建物の所有者ですから建物を自由に譲渡できます。
  建物が譲渡された場合、あなたがすでに建物の引き渡しを受けて住んでいるのなら、
  新所有者が当然に新賃貸人となり、あなたはそのまま住み続けることができます。
  ですから、明け渡しを求められても拒否できます。

Q. もとの賃貸借契約書の内容が引き継がれるのでしょうか。
A. はい。賃料の額などはもちろん、特約条項もすべて従前どおりとなります。
  ですから、必ずしも契約書を作り直す必要はありませんが、確認の意味で
  作り直しても構いません。
  新賃貸人側から、賃貸人が変わったことを理由に契約内容の変更を求めることは
  出来ません。

Q. 新しい家主が家賃を請求してきました。新旧家主から二重に請求されたりしないか
  心配です。

A. まず建物の登記簿謄本を確認して所有者の名義が変わっているかを確認してください。
  登記名義が変わっていれば、家賃は新賃貸人に支払わなければなりません。

  逆に、登記名義がまだ変わっていなければ、新賃貸人からの請求は拒むことが
  できます。ただ、いずれにも支払わないでいると、後で賃料不払を理由に
  契約解除などをされる可能性があります。
  どちらに払えばよいかわからない場合は、家賃を法務局に供託しておくと
  よいでしょう。

Q. 将来この建物から退去したとき、敷金はどちらに請求すればよいのでしょうか。
A. 建物の譲渡に伴って賃貸人が変わった場合、敷金は当然に新賃貸人に移転します。
  ですから、敷金は新賃貸人に請求することになります。
  旧賃貸人に対して延滞家賃がある場合は、延滞分を差し引いた額が新賃貸人に
  移転します。この場合は差し引かれた額だけ、新賃貸人に敷金を差し入れなければ
  なりません。


【借家の明け渡しについて】(相談者 50代男性)
Q. 私たち一家は借家に住んでいますが、家主さん一家が転勤先の東京から戻ってくること
  になり、私たちの住んでいる家に住みたいので出て行って欲しいと言っています。
  出て行かなければならないのでしょうか。

A. 賃貸借契約書に契約の更新がなく、期間の満了により契約が終了する旨の条項がある
  「定期借家契約」であれば、定められた期間が来れば明け渡しをしなければなりません。

Q. そのような条項はありません。契約期間は1年で、自動的に更新されています。
A. であれば、通常は無条件に明け渡しをする必要はありません。家主側から明け渡しを
  求めるには「正当事由」が必要です。
  正当事由の有無は、貸し主側、借り主側の様々な事情を総合的に考慮して判断されます。

  本件で言えば、貸し主が自分で住む必要があるという事情は正当事由を基礎づける事情の
  一つにはなりますが、通常はそれだけで正当事由を満たすとは言えません。

  このような場合、貸し主が借り主に立退料の提示をすることにより、正当事由が満た
  される場合があります。

  立退料には、@移転実費、A借家権価格、B営業用建物の場合は営業権の補償などが
  考慮されますが、具体的な金額は、個々の事案ごとに様々な事情を総合的に考慮して
  決めることになります。
  居住用の建物の場合は、立退料は100万〜数百万円となるケースが多いようです。
  訴訟になれば、裁判所が「金○○円の支払いと引き換えに明け渡せ」という判決を
  下すことになります。

  もっとも、立退料を払いさえすれば必ず明け渡しが実現できるとは限りません。
  明け渡しをさせることが賃借人にとって酷な事情があるようなケースでは、
  立退料の提示があっても正当事由なしとされることがあります。

  いずれにせよ、本件では立退料の支払いを求めるなどして交渉していく
  ことができます。訴訟を起こされても解決までには相当時間がかかりますので、
  当分住み続けることは可能です。


【借家でのペット飼育について】 (相談者 60代 男性)
Q. 私が所有するアパートに、賃借人が数世帯います。賃貸借契約書にペット禁止と書いて
  いるのに、賃借人のMさんが部屋の中で犬を飼っており、隣室から、鳴き声や糞尿の
  においなどの苦情が出ています。
  Mさんに犬を飼わないようにお願いしましたが、飼うのをやめません。

A. 契約書にペット禁止と書いているのですから、犬を飼うのは契約違反です。明け渡しを
  求めることも視野に入れて対処しましょう。

  明け渡し訴訟になれば、「家主が犬を飼わないように注意したのに、飼うことを
  やめなかった」ということを主張・立証する必要があります。
  口頭での注意や、普通の手紙では、裁判になったときに「聞いていない」「見て
  いない」などと言われると、家主さんが犬を飼わないように求めたということが
  認定されづらくなります。

  そればかりでなく、このまま長期間経ってしまうと、判決で「家主が何ら注意を
  せず、犬を飼うことを容認していた」という認定をされることもあります。

  そこで、後で内容を証明できるよう、内容証明郵便で「犬を飼うのをやめるように」
  という通知を早めにしておくべきです。弁護士が「○月○日までに飼うのを
  やめなければ、契約解除のうえ明け渡し訴訟を起こす」と書いておけば、効果が
  あるかもしれません。

Q. それでもMさんが飼育をやめなかったらどうすればよいでしょうか。
A. 契約解除、明け渡しを考えざるを得ません。賃貸借契約のような信頼関係に基づいた
  継続的な契約では、信頼関係を破壊するような著しい契約違反がある場合には
  契約解除ができます。
  本件では、近隣からの苦情が続き、犬が部屋の中を汚すなどして見過ごすことが
  できない状態なら、信頼関係が破壊されたものとして、契約解除のうえ明け渡し請求が
  できるでしょう。

  なお、犬を無断で連れ去ったりすると、逆にMさんから損害賠償請求されることも
  ありますので、注意してください。


【敷金返還について】(相談者 30代 男性)
Q. 数年住んだアパートから退去しました。家主から、襖、畳、クロスの張り替え、
  ハウスクリーニング等々の費用で敷金をオーバーするので、敷金だけでは足りない分を
  払ってくれと言われています。
  特別汚したり壊したりしたことはないのですが、賃貸借契約書でそうなっていると
  言われています。払わなければならないのでしょうか。

A. 賃貸借契約書に「入居中の襖の張り替え、畳表替え、クロスの張り替えは賃借人の
  費用負担で行う」と書かれていますね。

  このような小修繕特約は、入居中に賃借人が修繕をした場合に賃貸人が修繕費用を
  払わなくてもよいという意味にすぎず、退去の際などに賃借人が修繕して原状に
  戻さなければならないという意味ではないというのが判例です。家主がこの条項を
  根拠に敷金を返還しないということはできません。

Q. 「本契約終了の際は、建具、襖、クロス等の破損、汚れは、故意過失を問わず、すべて
  賃借人の負担で原状に回復する」という条項もあります。

A. 普通に住んでいれば、床や壁などが古くなったり摩耗したり、多少汚れたりすることは
  当然です。
  家主は、このような「通常損耗」を考慮したうえで家賃が定まっているはずです。

  ですから、家賃に加えて通常損耗の修繕費用まで賃借人に払わせるのは二重取りです。

  通常損耗分も賃借人負担とする条項は、一般消費者である賃借人に一方的に不利な
  もので、消費者契約法により無効と考えられています。
  したがって、この条項にも従う必要はありません。
  たとえば、壁のエアコンの跡、日照等によるクロスの変色、冷蔵庫等による電気ヤケ、
  家具による床のへこみなどは、通常損耗と考えられています。ハウスクリーニングの
  費用も同様です。
  反面、賃借人の落ち度で汚れたりした分の費用は、敷金から差し引かれても仕方
  ありません。
  本件でも、通常損耗の範囲であれば、家主の請求に応じる必要がないだけでなく、
  家主に敷金の返還を請求できます。


【日照トラブルについて】(相談者 40代 男性)
Q. 1年前に中古マンションの1室を購入し、家族で住んでいます。
  仲介業者の広告には「日当たり、眺望良好」と書かれており、仲介業者の担当者もその点
  を強調していました。
  ところが、最近、南側の隣地の木造家屋が取り壊され、これからマンションが建て
  られるようです。建築をやめさせられないでしょうか。

A. 隣地所有者が隣地にどのような建物を建てるかは、基本的には自由です。
  ただ、日照や眺望の侵害が「受忍限度」を超える程度であれば、建築差し止めや、
  損害賠償請求ができることもあります。
  受忍限度を超えるかどうかの判断は、建築基準法の適合性、地域性、日照等の侵害の
  程度などが考慮されます。
  建築基準法に適合して建築確認が下りているのであれば、その他の要素が相当
  悪質でなければ、受忍限度を超えるとは言えません。とりわけ、建築の差し止めは、
  かなりハードルが高くなります。

Q. 仲介業者に何か言えませんか。
A. 原則的には、不動産業者には、周辺環境について調査し、説明する義務があるとは
  言えません。
  ただ、業者が建築計画を知っていた場合は、買主に説明する義務があります。
  裁判例でも、知っていたのに虚偽の説明をして購入させたようなケースでは、
  業者敗訴の判決ばかりです。

  業者が建築計画を知らなかった場合でも、本件のように販売時に住環境の
  良さを謳ったり、買い主が日照などの住環境の良い物件を探していることを
  認識していたりする場合には、調査・説明義務が生じます。調査の容易さ等にも
  よりますが、以前から建築計画があったのであれば、仲介業者に対する
  損害賠償請求が認められる可能性はあるでしょう。

Q. 売買契約のキャンセルはできませんか。
A. 業者の不誠実さや、被害の大きさ、買主が日照・眺望をどの程度重視して購入
  したかによっては、契約を解除し、マンションを明け渡したうえで代金返還を
  求めることができる場合もあります。

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