弁護士楾大樹の法律相談室

消費者問題

【「内職商法」につい】(相談者 40代 女性)
Q. 「パソコンで在宅ワーク」というチラシを見て、自分にもできそうだと思い電話してみたところ、
  「仕事を覚えてもらうための教材代として40万円かかるが、仕事はたくさん紹介するのですぐ元
 は取れる」と言われました。数日後、送られてきたクレジットの契約書に指示されるまま記入し、返
 送しました。
  その後、「検定試験に合格したら仕事を紹介する」と言われ、勉強して試験を受けたものの合格
 できず、仕事を紹介してもらえません。クレジット会社に毎月支払いをしているだけの状態です。

A. これは、「内職商法」と呼ばれる典型的な悪徳商法です。業者の目的は教材を売りつけること
 にあり、仕事の紹介などするつもりは初めからないはずです。
  この業者は、試験に合格しないと仕事を紹介しないことを説明せず、「すぐ元がとれる」などと不
 確実なことを断定的に述べて勧誘を行っています。
  このような場合は、消費者契約法や特定商取引法により業者との契約を取り消すことができま
 す。弁護士から業者に、その旨の内容証明郵便を送れば取り消せます。

Q. 教材代はクレジット会社が立替払いしています。クレジット会社にだまされたわけではないので
 すが、クレジット会社にも支払わなくて良いのでしょうか。

A. はい。業者との契約を取り消した場合は、クレジット会社に対しても、今後の支払いを拒むこと
 ができます(割賦販売法)。弁護士からクレジット会社に、その旨の内容証明郵便を送っておけ
 ば、大抵は大丈夫です。

Q. すでに支払った分を取り返せるでしょうか。
A. 業者に対する内容証明郵便に、「契約を取り消す」旨に加え、「すでに払った分を返せ」と書い
 ておけば、明るみになるのをおそれてか、素直に返還に応じる業者は結構あります。
  任意に返金してくれない場合は訴訟を起こすしかありません。金額が少額なので、ご自分で簡
 易裁判所へ行き、「少額訴訟」という簡易な訴訟を起こす手もあります。

成年後見制度

【成年後見制度について】(相談者 50代 女性)
Q. 私には80歳の父と弟がおります。父は入院中で、認知症があります。私は遠方に住んでいる
 のでなかなか見舞いにも行けないのですが、父の病院の近くに住んでいる弟が、父名義の預貯
 金を勝手に引き出して使っているようです。弟は自分のためにお金を使っているのではないかと
 思います。弟と話しても取り合ってくれません。

A. あなたが弟さんに対して、通帳等を自分に引き渡すよう請求したりすることはできません。お父
 さんの存命中は、財産はあくまでお父さんのものであり、あなたのものではないからです。
  本件の解決には、お父さんが認知症とのことですので、成年後見制度の利用が考えられます。
  成年後見制度とは、判断能力が不十分で意思決定が困難な方について、生活全般に必要な
 意思決定を代行・支援する制度です。判断能力が不十分なために不利な契約をするなどして損
 害を受けないように、本人を保護するための制度です。
  この制度を利用するには、判断能力に問題がある旨の医師の診断書などの書類をそろえ、家
 庭裁判所に申立をする必要があります。
  成年後見制度には、本人の判断能力の程度に応じて、@後見A保佐、B補助という3つの類
 型があります。それぞれ後見人、保佐人、補助人が選任され(それぞれ権限が異なります)、本人を
 保護します。
  お父さんが自分では何も判断できないような状態であれば、家裁に後見の申立をし、それが認
 められれば、選任された後見人が財産を管理することになります。
  その後は、後見人に無断で財産の処分などがされれば、後で取り消すことができます。弟さん
 も、勝手に預金を引き出して使ってしまうようなことはできなくなります。
  誰を後見人にするかについては、親族に適任者がいればその方で構いませんが、本件のよう
 に姉弟間でもめているようなケースでは、弁護士等に後見人になってもらった方がよいかもしれま
 せん。

裁判手続

【民事裁判の流れ その1】
Q. 民事裁判の流れを教えてください。
A. 【訴状の提出】
  まず、原告が「訴状」という書面を裁判所に提出します。訴状には、原告と被告の住所と名前、
 「金○○円を支払え。訴訟費用は被告の負担とする。」という請求の趣旨、それを根拠づける事実
 関係などを記載します。
  テレビのニュースで、「提訴する場面」として弁護士が裁判所に入っていくシーンが出たりします
 が、あれはテレビ向けのパフォーマンスで、普通は事務員が裁判所の受付に書類を持って行くだ
 けです。
 【訴状の送達】
  訴状は、裁判所から被告に郵便で送達されます。もし、裁判所でないところから「あなたは訴え
 られました」とかいうのが届いたら、振り込め詐欺です。
  「被告」という呼称に憤る被告の方がいますが、刑事裁判の「被告人」ではありませんので、落ち
 着いてください。
  訴状の「訴訟費用は被告の負担とする」という部分を見て、「なぜ相手方の弁護士費用まで負
 担しないといけないのか」と憤る方もいますが、訴訟費用というのは、訴状に貼る印紙代等々のこ
 とで、弁護士費用は含まれません。  
  担当の裁判官と書記官は、機械的に決められます。事案によっては、どの裁判官に当たるか
 で、運不運があったりします。
 【第1回口頭弁論期日まで】
  被告は、第1回期日までに「答弁書」を裁判所に出します。
  答弁書には、「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」という決まり文句を書
 きます。和解で無難に解決したいと思っていても、このように書きます。これを見て、新聞などが
 「被告は全面的に争う姿勢を見せた」などと報じたりしますが、正確ではありません。
  被告が答弁書を出さず、第1回期日も欠席すると、原告勝訴判決が出ます。
  答弁書を出しておけば、被告は第1回期日を欠席することができ、本格的な審理は第2回期日
  からとなります。

【民事裁判の流れ その2】
【第2回期日以降】
  原告と被告の言い分に食い違いがある訴訟では、互いに「準備書面」で言い分を主張し、証拠
 を提出して立証活動を行います。次回期日の少し前に、FAXや郵便で、裁判所と相手方に書面を
 送って提出します。
  あらかじめ書面に言い分を書いて提出しているため、法廷でのやりとりはごく短時間で終了しま
 す。期日では、「次回期日までに反論の書面を提出します」などと言って、次回期日を決めるだけ
 だったりします。
  期日は1〜2か月に1回くらいの間隔で開かれ、互いに、次回期日までに提出する書類の準備
 をしていきます。
  準備書面を何度か出し合い、言い分に食い違いがある事実関係(争点)はどの点かを明らかに
 していきます。
  第2回期日以降は、テレビで見るような法廷ではなく、丸いテーブルを裁判官と原告・被告が囲
 む形の「ラウンドテーブル法廷」で行われるのが普通です。
  遠方に住む当事者は、期日に電話で出席することもできます。
  弁護士がついていれば、弁護士だけが出廷すれば十分です。
 【尋問】
  争点を整理した後、争点についてどちらの言い分が真実なのか明らかにするため、訴訟の最終
 盤に証人や原告・被告本人の尋問を行います。双方の弁護士や裁判官が、一問一答式で質問を
 重ねていきます。
 【判決】
  判決期日には、原告も被告も出席する必要がありません。誰もいない法廷で、裁判官が判決を
 読み上げるという、ちょっと滑稽なことをします。
  弁護士は、事務員が裁判所に取りに行った判決書を見て、判決内容を知るのが普通です。
  決して、「勝訴」とか書いたものを持って裁判所の前を走ったりはしません。
 【和解】
  訴訟の途中で、話し合いで和解条項を決め、円満に訴訟を終わらせることもよくあります。
  判決では決められないことでも和解条項には入れることができるなどのメリットがあります。

下請法

【下請法について】
Q. 先日の新聞に、「平成22年度の下請法違反5.1%増、公正取引委員会中国支所による勧告
 1社、指導308社」という記事が載っていました。下請法とはどのような法律ですか。

A. 大きな会社と小さな会社が取引をする場合、大きな会社が、その優越的地位を利用し、小さな
 会社に無茶な要求を押しつけるということが起こりがちです。
  これを防ぐための法律が、独占禁止法や下請法です。
  下請法は、製造や修理等の委託契約において、強者である「親事業者」が、弱者である「下請
 事業者」に不当な要求を押しつけることを防ぎ、下請事業者を保護しようとする法律です。
  下請法が適用される契約関係か否かは、両会社の資本金の額によります。製造・修理委託に
 ついては、資本金3億円超の親事業者→3億円以下の下請事業者、資本金1000万円〜3億円の
 親事業者→1000万円以下の下請事業者といった具合です。

Q. 下請法の規制内容は?
A. 【下請代金の支払期日】
  親事業者が下請事業者から給付を受領してから60日以内で、かつ、できるだけ短い期間で定
 めなければなりません。
  【書面の作成・交付・保存】
  親事業者は、下請事業者に委託した場合、@直ちに、下請事業者の給付内容、下請金額、支
 払期日、支払方法等を記載した書面を下請事業者に交付するとともに、A下請取引の経緯等を
 記載した書類を作成・保存しなければなりません。
  【親事業者の禁止事項】
  @下請業者に非がないのに受領を拒絶すること、A支払期日を過ぎても代金を支払わないこ
 と、B書面に記載した代金額を、下請業者に非がないのに減額すること、C下請業者に非がない
 のに返品すること、D著しく低い下請代金額を決めること、E取引関係を利用して下請業者に商
 品を購入させること、F下請業者が公取委等に下請法違反を通報したことを理由として、取引停
 止等の報復を行うこと。
  下請法違反に対しては、公取委から勧告等がなされる他、罰金が科せられることもあります。

その他

【法テラスについて】(相談者 50代 女性)
Q. 弁護士に相談や依頼をしたいのですが、経済的に余裕がなく、弁護士費用を払えません。
A. 「法テラス」を利用すれば、弁護士費用の立替払いをしてもらうことができます。
  法テラス(正式名称:日本司法支援センター)は、独立行政法人の枠組みに従って設立された法
 人で、資力の乏しい方のために、無料法律相談や弁護士費用の立て替えなどを行っています。

Q. どの程度の資力なら利用できるのでしょうか。
A. 居住地域、家族の数、家賃・住宅ローンの額などを考慮し、収入が一定以下であれば利用で
 きます。たとえば、広島市で夫婦2人家族の場合、収入が夫婦で27万6000円(家賃・住宅ロー
 ンがある場合は5万3000円まで加算)以下であれば利用できます。詳しくは、法テラスや弁護士
 にお問い合わせください。

Q. どのように手続をすればよいのでしょうか。
A. ご自分で直接法テラスに申込をし、法テラスで法律相談をすることもできます。
  また、法テラスに登録している弁護士の事務所で法律相談をしても構いません。その場合は、
 相談に応じた弁護士が法テラスに申込をします。知人に弁護士がいる場合や、インターネットやタ
 ウンページなどで気に入った弁護士を見つけた場合は、その弁護士の事務所に電話して、法テラ
 スを利用できるか問い合わせてみるとよいでしょう。
  法律相談だけであれば、相談料は法テラスが弁護士に支払い、その後返済は不要です(ただ
 し、同一問題については3回が限度で、4回目からは有料です)。
  弁護士に依頼する場合は、着手金や成功報酬を法テラスが弁護士に立替払いします。この場
 合は、住民票や収入を証明する書類などを法テラスに提出して、審査を受ける必要があります。
  審査が通れば、法テラスが決めた金額が弁護士に立替払いされます。その後、毎月5000円
 〜1万円を、口座引落で法テラスに返していくことになります。

【FP資格を取得しました。】
  今回は私事です。先日、「2級ファイナンシャル・プランニング技能士」を取得しました。いわゆる
 ファイナンシャルプランナーです。この資格を持つ弁護士は、全国的にも珍しいと思います。
  FPの試験は、社会保障制度などを含めた生活設計、保険、資産運用、税務、不動産、相続対
 策といった分野から出題されます。
  私の事務所では、日々様々な相談をお受けしていますが、どんな法律問題も、お金や資産に関
 連します。そのため、これらの分野のことが、あちこちで顔を出します。
   しかし、これらの分野をきちんと勉強したことがある弁護士は少数派かもしれません。そのた
 め、税金や社会保障制度については、税理士や社労士に聞かないとわからなかったりします。
 また、これらの知識がないばかりに問題を見落とすこともあり得ます。問題点の存在に気がつかな
 いと、その問題について調べることもなく、通り過ぎてしまうことになってしまいます。
  たとえば、自己破産や離婚などに伴って自宅を譲渡するケースはよくありますが、譲渡所得税
 の課税関係、給与所得等との損益通算などの問題までアドバイスしておかなければ、依頼者に
 大変な迷惑をかけてしまう可能性があります。
  また、多重債務の問題は、ファイナンシャルプランニングそのものです。
  相続問題についても、遺言を書きたいなどという依頼はよくありますが、相続税対策について
 「税理士に聞いてくれ」では依頼者は不満でしょう。
  保険の知識も、交通事故の問題などにとどまりません。相続対策に保険を活用する方法もあり
 ます。多重債務者が必要性に乏しい生命保険に入って保険料を頑張って払っていることもよくあり
 ます。企業のリスク管理のアドバイスにも有用です。
  その他、法律相談の際に、今までとは違った角度からのアドバイスができるようになったと実感
 しています。   
  勉強しない人は生き残れない時代だと思います。皆さんも頑張りましょう。

【インターネット上での誹謗中傷への対応】
Q. インターネット上で、弊社について、根拠のない誹謗中傷を書かれています。
  どのように対処したらよいでしょうか。

A. 
  1 発信者が判明している場合

   (1) 発信者に内容証明郵便を送付
     記事の削除を求めるとともに、応じない場合には損害賠償請求を行う旨の警告を
    する方法があります。
   (2) 発信者に対する仮処分申立
     「インターネット上で公開する・・・に記載した『・・・』との記事を削除せよ」
    との命令を、比較的スピーディーに裁判所に出してもらう手続です。
     裁判所に命じられても削除しない場合には、発信者に対して金銭の請求も可能
    です。
   (3) 刑事告訴
     記事の内容が名誉毀損や信用毀損などの犯罪に該当する場合は、刑事告訴も考え
    られます。警察が動くことが記事の削除につながる可能性もあります。

  2 発信者不明の場合

   (1)掲示板やサイトの管理人への削除依頼
     削除すべき部分を特定したうえで、削除すべき理由(事実無根であること等)を
    説明し、理解を求める必要があります。
    削除した場合、管理人は発信者からクレームを受ける可能性があるからです。
   (2)プロバイダに対する発信者情報開示請求
     プロバイダ責任制限法に基づき、プロバイダに対して発信者情報の開示を求め、
    発信者を突きとめる方法があります。
     ただ、発信者情報は高度な個人情報を含んでいるため、プロバイダが任意に開示
    することは稀です。
     そのため、裁判所に、仮処分申立や訴訟提起といった煩雑な手続が必要となり
    ます。
    裁判手続の中で、発信者に損害賠償請求等を行う必要があるなど、発信者情報
    の開示を受ける正当な理由があることを主張・立証する必要があります。
    このようにして発信者を突きとめ、発信者に対して、前述の措置をとることになり
    ます。

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