弁護士と司法書士の違い

 司法書士は、紛争の対象が140万円を超えないケース(管轄が簡易裁判所となるケース)のみ、依頼者の代理人として活動できます。

 もっとも、債務整理に関しては、何が「140万円」以内ならよいのか、見解が分かれうるところで
す。これについて、詳しくご説明しましょう。

  第1に、利息制限法に基づく引き直し計算をした結果、債務が減額される場合、減額分が140万円に収まっていればよいのか、それとも、もともと業者が請求していた残債務が140万円を超えていればダメなのか。
  この点については、もともと業者が請求していた、約定利率に基づく残債務額が140万円を超えれば、司法書士に権限はないと考えられます。神戸地判平成20年11月10日も、同様の見解を採っています。
 引き直し計算によっていくら減額できるかは、受任したうえで計算をしてみて初めて判明することです。受任して計算してみた結果、やっぱり受任できません、というのはおかしな話です。
 また、減額分を基準とすると、次のような不都合が起きます。
 約定利率に基づく残債務が200万円あり、引き直し計算の結果、50万円に減額できたとしましょう。減額分が150万円になったということです。この場合、減額分も140万円を超えるので、司法書士には権限がないことになります。しかし、残債務を60万円として業者と和解すれば、減額分は140万円となり、和解によって報酬が取れるかもしれません。もしこのようなことがなされれば、依頼者は10万円損をすることになります。このようなケースでは、司法書士は、依頼者の利益を犠牲にして、自己の利益を図りたい誘惑にかられかねないということになります。上記の神戸地裁の判決も、この点を指摘しています。
 司法書士が行った和解が、権限を超えるものとして、後で無効とされた裁判例もあります(さいたま地判平成21年1月30日)

 →1社でも、残債務が140万円を超える業者がある場合は、弁護士にご相談ください。

 第2に、多重債務の方であれば、全社の債務の総額が140万円を超えたらダメなのか、1社ごとに140万円以内ならよいのか。
 この点、多重債務の問題は、負債全体を解決してはじめて解決したと言える問題です。
 一部の業者だけ解決しても、残りの業者に払っていけないのでは、解決になっていません。
 負債全体を見渡し、家計の収支を考慮して、全債権者に返済していけるのかどうかを考えていく必要があります。
 そうすると、負債総額が140万円を超えるかどうかを基準とすべきように思われます。
 ただ、実際には、負債総額が140万円を超えるのに司法書士が代理人となっているケースは結構あるかもしれません。「グレー」な問題です。

 →各業者から請求されている負債の総額が140万円を超える方は、弁護士に依頼する
  ことをお勧めします。

 第3に、過払い金が発生するケースでは、過払い額が140万円ならよいのか、もともとの約定利率に基づく残債務の額と過払い額の合計が140万円以内でなければならないか。
 この点ついては、さいたま地判平成21年1月30日の判決で、後者の見解が採用されています。
 この見解によれば、もともとの債務額が100万円の場合なら、過払い金が40万円を超えると、司法書士に権限はないということになります。
 過払い金が発生するケースでも、司法書士と依頼者の利益が相反する可能性がつきまといます。
 たとえば、過払い金が200万円発生したとしましょう。 裁判をすれば200万円満額回収できる見込みがあったとしても、それは司法書士の権限外となります。しかし、140万円に減額して和解すれば、権限内で和解することができ、依頼者は損をしますが、司法書士は報酬を取ることができます。

  →貸金業者との取引期間が長い方は、減額分や過払い金が大きくなることがある
   ので、最初から弁護士に依頼しましょう。


【交渉力の違い】
 過払い金の返還交渉では、貸金業者は、司法書士には簡易裁判所の代理権しかないという弱みを突いていくはずです。
 司法書士が代理人であれば、貸金業者は、「減額に応じなければ、控訴してどこまでも争う」という態度を貫くという交渉方法を用いるかもしれません。簡易裁判所の判決に対して控訴されると、司法書士は代理人になれなくなるからです。
 弁護士が代理人となっていても、最近は、一審で判決となり、貸金業者が控訴してくることが増えてきました。過払い金の支払時期を引き延ばす意図や、こちら側に手間をかけさせ、面倒がる弁護士が減額して和解に応じるのを期待するという意図があるものと思われます。
 推測にすぎませんが、弁護士に対してもそうなのですから、司法書士が相手であれば、なおさらこのような交渉手段を用いているものと思います。

 地方裁判所では、原則として弁護士しか代理人になることができません。
 簡易裁判所であれば、貸金業者の単なる従業員が期日に出席することも可能です。簡裁の期日に出席する従業員の決裁権限に制限があるため話がしづらく、長引くことがあります。 貸金業者にとっては、地裁に訴訟を起こされると、 原則として弁護士に依頼する必要があるため、弁護士に依頼する前に和解して終わらせようとすることがあります。

  →弁護士の方が、良い結果を出せるかもしれません。


【手間やコスト】
 司法書士に依頼後、過払い金が140万円を超えていることが判明すれば、弁護士に仕事を引き継ぐなどしなければならず、依頼者には余計な手間がかかります。
 過払い金が140万円を超えているのに、司法書士が裁判書類の作成を行い、本人に地裁で訴訟をさせることもあるようです。
 このような方法をとると、依頼者ご本人が裁判所に何度か行く必要が出てきます。裁判の期日は平日の昼間に行われますので、お仕事を休んだりする必要が出てくるかもしれません。休みがとりづらいため、減額に応じて和解しようということも起きるかもしれません。
 また、上にも書いたように、最近は和解ができずに判決に至ることが多くなり、判決後に貸金業者が控訴してくることが増えてきました。簡易裁判所の判決に対して控訴されると、地裁に移ります。そのため、控訴後は司法書士が代理人となることができず、弁護士に依頼し直すか、依頼者ご本人が裁判所に行く必要が出てきます

 弁護士に依頼すれば、弁護士だけが裁判所に行けばよいため、依頼者ご本人が裁判所に行く必要はありません。弁護士であれば、依頼者の手間のことを考えずに、自由に活動できます。

  ある業者に対して100万円の過払い金がある依頼者が2人おられる場合、当事務所では、原告を2人とする1つの訴訟を、地裁に起こします。そうすれば、裁判所に行く回数も半分で済むからです。 訴状に貼る印紙代も、2人併せれば安くなりますので、依頼者にとってもメリットがあります。
  しかし、司法書士は1人ずつ簡易裁判所に訴訟を起こすことになり、弁護士に比べ、手間がかかることになります。
 自己破産や個人再生の申立をする場合、地方裁判所に申立を行いますので、司法書士は代理人にはなれません。
 司法書士は、書類作成の援助という形で関与することになり、申立を行うのはあくまで本人ということになります。

  →弁護士に依頼した方が、依頼者の手間が少なくて済むことがあります。

 
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